懐恋。
「じゃあ一条さん、ここ解いてみて。」

ただ今数学の補習中。先生に見とれつつも、補習はちゃんと聞いていた。だが、この問題はまだ完璧に出来ないっというより補習でまだ1回も携わってない問題。

「そこで百面相してないでとりあえずこっち来い。」

ヒラヒラと手のひらで招かれ、先生の方に向かって歩き出すと

「やっぱ明音っておもしれーな。」

って耳元でコソって言われたかと思えば、黒板に向き直って方程式を書き出している先生。ってずるい。もう先生ずる過ぎる。大人の余裕?他のクラスからも補習を受けてるので一条ちゃんどころか一条さん呼びで、ショボンってしてたのに他の子にバレないように明音って耳元で呼ぶんだもん。首もとにかかった先生の吐息の温もりがまだ残っていて余韻に浸っていると

「一条さん、話聞いてる?補習受けてる身なのに余裕だな。」

って黒い微笑を向けられた。

「えっ、あ、すみません…えっと?」

「もう、仕方ないな。この問題は一昨日やったとこの応用編だからちょっと方程式を変えれば出来る。って事でこの方程式に数字当てはめてやってみ?」

って小首をかしげながら渡されたチョークを受け取るけど、先生はあざとすぎます。そしてずるすぎます。
< 109 / 139 >

この作品をシェア

pagetop