懐恋。
「一条ちゃん付いてきてー。」

先生に呼ばれて近付くと一緒に道具取りに行くぞ。と言われて、わずかな時間だけど先生と2人っきりで過ごせる事に心が踊る。

「先生、部活は体育祭終わってからですか?」

「おう、すぐ期末時期になるけどちょっとあるぞ。」

そっか…体育祭終わったらすぐ期末なんだ…また二人で過ごす時間無くなっちゃうな…

「ん?どした?寂しい顔して。」

覗き込まれてる事にビックリして仰け反ると転びそうになったけど、先生の力強い腕が腰に回された。

「あ…すみません…ごめんなさい…」

「おう、怪我しなくて良かった。で、どーした?」

心配そうに見つめてくる先生だけど、2人っきりの時間がなくて寂しいなんて言えない…。

「何も無いですよ。あ、着きました。」

体育倉庫に辿り着いて中に入ろうと足を踏み入れるとグイっと引っ張られた。

「言わなきゃ分かんねーだろ。明音、どーした?ちゃんと言えよ。」

さっきと違って大人で男の顔をしてる先生に誤魔化せなくて

「2人での時間が無いなって思いまして…」

見つめ合っていた視線は恥ずかしくなって徐々に下にズレていったけど、なんとか声を出して伝えることが出来た。

「んじゃ、どっから時間作って出掛けるか。期末始まる前に。そしたら期末頑張れるか?」
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