懐恋。
「見間違い?泣いてなかった?」

もう1度言われて思わず足を止める。

「なんで…気付いたんですか?」

一瞬の出来事なのになんで先生は知ってるの?

「見てたから。俺のせい?俺が言った後泣いてなかった?」

見てたからってサラリと言う先生も。俺のせいって気付いちゃう先生も。私の視線に合わせて話す先生も。全部全部ずるいって感じちゃう。だから私は

「泣いたっていうか目にゴミが入っただけなので、大丈夫です。」

って澄ました顔をして再び足を動かした。

「本当?気になったから手伝ってもらったんだけど、俺のせいじゃねーの?」

そんな言われ方されたって、だったら先生は応えてくれるの?好きな人が誰なのか。どういう人なのか。でもきっと先生は内緒。って答えるだけでしょ?だったら私の事を気にしないでほしい。勝手に好きになって、勝手に想ってるだけだからあんまり優しさを与えないで。余計好きになっちゃうから。諦めれなくなっちゃうから。この想いが溢れ出しそうになっちゃうから。

なんて言えるはずもなく、

「本当です。早く戻って花火しましょう?」

って答えるのが精一杯。近付いて離さない先生は

「ん、あ、来週に出掛けるからゃんと行き先考えとけよ?」

なんて言い出す。
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