懐恋。
保健室を後にする先生の背中に付いていきながら火照った頬を自分の手のひらで包み込む。もうさっきから心臓がバクバクとうるさいの。なんでこんなにバクバク言ったり頬が赤くなったりするんだろう…?先生と目が合って、先生の視界に私が入って、楽しそうに笑う先生を見て、大人な男の声を間近で聞いて…そしたら心臓がギューって痛くなって、赤くなるのはなんでだろ?それに最後保健室を出る時先生に軽く頭をポンってされて、その部分が妙に熱を持ってるのはなんでだろ…?

「あ、明音!あんたちょっと大丈夫!?」

「鼻血止まったみたいで良かった。他は怪我してない?」

グランドに戻ったらさっちゃんと梨奈ちゃんが駆け寄ってきて心臓そうに顔を覗き込んでくるから、私はさっきまでの事を忘れるように笑顔を作って

「心配掛けてごめんね?もう大丈夫だよ。」

「もうあんたは本当にボーッとしてるんだから!!でも大事にならなくて良かった。」

「沙月も明音の子守で大変だね。」

「これからは梨奈にも見てもらうからね。」

「え、私子供じゃないよ?子守しなくてもいいよ?」

「はいはい、一条さんは無事だったので続きすんぞ。」

先生の一声でドッヂボールが再開し、今日の授業は本当にドッヂボールで終わってしまった。
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