懐恋。

「よし、じゃあ練習を兼ねて出掛けるか。カメラ持って用意して。」

立ち上がった先生の後を追うように慌ててカメラを腕に抱え込み、後ろを付いて行く。

「靴履き替えたら校門で待ってて?」

ご丁寧に昇降口まで送ってくれた先生の後ろ姿を眺めるけど、やっぱなんだか好きだなって思う。
校門でしばらく待ってたら先生がやって来て、肩を並べながら隣を歩く。傍から見れば先生と生徒。だけどやっぱり、1人の男と女として先生の隣を歩いてみたいな。制服じゃなかったらそういう風に見られるかな…?

「明音、すっげー百面相してるぞ。」

聞こえてきた声に顔を上げると

「うわ!ビックリした!!」

先生が立ち止まって私の顔を覗き込んでいた。

「どした?腹でも痛い?」

「痛くないです…行きましょ?」

ふーん。って言いながら再び歩き出した先生の隣を私は歩く。いつもと同じ風景なんだけど、先生と一緒ってだけでなんでもなかった風景が、一気に輝きだして見える。キラキラと魔法が掛かったような、変わり映えない風景も今日はなんだか楽しい。

「よし、着いた。とりあえずここで目に付く物とか気になる場所撮ってみ?俺はベンチで寝てるから終わったら声掛けて。」

着いた場所は公園で、説明もそこそこに先生はベンチに向かい出した。いや、いいんだけどね?もうちょっと親身になってくれてもよくないですか?とか思うけど、ベンチで寝るのは先生らしいから、とりあえずカメラと向き合う事にした。
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