懐恋。
授業が終わって帰る支度をしている時に

「一条さん、ちょっと来て〜」

間延びしたフワッとした声が私の耳に届いた。

「あら、明音は先生に呼び出しですか?」

「もう、さっちゃん!からかわないでよ!」

「一緒に帰ろうとしたけど私先帰るね。沙月は見学行くでしょ?」

「うん、じゃあ昇降口まで一緒に行きますか。明音また明日ねー。」

ニヤニヤしながら手を振ってくる2人に手を振り返して、私は先生の元へ向かった。

「先生、どうしましたか?」

「部活。」

教師用の椅子に座って寝てるのかな?と思わせるように、目を瞑っていた先生がポツリと言葉を発した。

「部活って何がですか?」

「写真部入るだろ?」

よいしょって言いながら姿勢を正した先生は、目をぱちくり開けて私の視線に目を合わせてきた。うん、正直先生可愛すぎます。なんかの小動物みたいな動きをされて私の心臓がドクっと鳴った。

「あ、はい。入りますよ?」

「だから部室見に行こうか。整理しないといけねーんだよ。」

「分かりました。」

先生がそう言って立ち上がって歩いて行くのを私は付いていきながら、私はなんで誘われたんだろうと思ったが先生が鼻歌歌いながら楽しそうに歩いてるのを見てると、そんな事はどうでもいいように思えてきた。
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