懐恋。
「ここ。」

空き室に辿り着いて、ガラガラと音を立てながら扉を開けたら妙に埃っぽい空気が流れてきた。

「先生…ここの教室って使われてないんですか?元々の写真部の部室は?」

ぺたぺたとスリッパの音を立てながら教室の中に入っていく先生に声を掛ける。

「ここは元々先生達の資料を置いてる部屋なんだけど、写真部立ち上げる際に、ここにある資料を片付けたら使っていいって。だから掃除すんの。」

くるりとこちらに向き直って発した言葉の終わりは、ムッて下唇を突き出して私を見てくる先生。そんな拗ねた子供みたいな事をされたらまた心臓がバクバク言いだす。先生…可愛すぎます!!

「掃除…手伝ってくんねーの?」

私が何も答えなかったら首をコテっと傾けてこちらを見てくる先生…も可愛いすぎて心臓に悪い。

「あ、はい。写真部立ち上げたの知らなくて…掃除しましょうか。」

「ん、とりあえず窓開けて先生事に資料分別しようや。もう居なくなった先生分は処分していいってさ。」

そう言って資料に向き直った先生の隣に私も行き、先生事に資料を分けながら学校の授業では何が好きで何が嫌いで、弁当のおかず好きランキングベストスリー、など他愛のない話をしながら先生との放課後を過ごしていく。
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