懐恋。
「大丈夫です。私の家緩いので。」

ドクドクと騒がしい心臓の音がバレないように、あくまで冷静を装って答える。

「じゃあさー、裏門の前に荷物持って集合な。じゃ、また後で。」

飲み終えたココアの缶を握り潰して、ヒラヒラと手を振りながら、ぺたぺた足音を鳴らして、教室から出て行った。

えっと…えっと?私は今から先生とお出かけなんだよね?なんで?なんで私なんかを誘ってくれたんだろう。ふぅーっと一息をゆっくり吐き出して、グルグル回る感情を落ち着かせる。今まで学校の先生と個人的にお出かけなんでしたことないし、周りの子達からもそんな話聞いたことない。だから誘われたのは通常では無いって分かる。じゃあなんで私なんかを誘ってくれたんだろう…?あ、確か先生は私を見てるのが面白いって言ってたから、きっと観察したいのかな?

考えても分からないし、先生を待たせても悪いので強引に自分の中で答えを見つけた私は、空き教室を出て自分の教室に走って戻り、荷物を取った後にまた裏門までダッシュで向かった。こんなに全速力に走れてる自分は、さっちゃんを待たせてる時にもこんなスピードは出したことないや!なんて考えながらも先生の元に向かう足は浮き足立っていた。
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