懐恋。
駅に着いて、駐輪場に自転車を止めた行こ?って私に手を差し出す。

「えっと…先生?」

「ん?ほら早く。」

ニギニギって手の平をグーパーグーパーしながらコテっと首を傾げる。あー!もう可愛いすぎます!!でもだからといってこの差し出された手の平を、私にはどうすればいいのか分からない…。どうすればいいのかと悩んでいると、シビレを切らした先生はスッと私の手を取って駅の改札へと足を進める。

「先生!あの、この手はなんですか?」

「だって一条ちゃん迷子になりそーだもん。やだ?」

やだ?ってそんな可愛く聞かれたら断られるわけもなく、頬を赤らめた私は黙って先生の言う通りにする。切符売り場で2枚の乗車券を買った先生は、一枚を私に渡して改札をくぐった。

「先生…あの、お金いくらですか?」

「しぃー。先生って言うのやめない?なんか俺いけない事してるみてーじゃん。後、お金はいらない。俺が誘ったんだし。」

電車を待ってる間に鞄から財布を取り出して切符代を払おうとしたのに、断られちゃった。先生って呼ぶなとか、お金はいらないとか、なんか急に先生が大人の男性なんだと気付いた。

「じゃあなんて呼べばいいですか?」

「んー。そうだな…学でいいよ。」
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