懐恋。

ガタンゴトンと揺れる電車の中で握られた手の平に温もりを感じる。チラッと先生の顔を見れば瞼は閉じられてて、もしかしたら立ったまま寝てるのかな？と思った。

途中の駅から沢山の人が乗り込んできて、押し潰れそうになる私を先生は扉の前まで引っ張ってくれて、皆から私を守るように両腕を扉に付けて、先生と扉の空間に私は収められた。守ってくれたのが嬉しいのと、繋がられてた手が離された悲しみが入り混じって、下を俯いて見てたら「どうした？」と頭上から声が掛かってきたので、ゆっくりと先生の視線に自分の視線を合わせた。

「ん？どっか痛い？」

「痛くはないです…」

「じゃあどうした？下になんかあんの？」

「ないです…守ってくれてありがとうございます。」

「んてかこれ、ちょっと前に流行った壁ドンみてーだな。んはは。」

壁ドン…壁ドン！？そんな事意識してなかったから急に照れくさくなっちゃうし、早速名前で呼ばれるし、先生がふにゃって笑うから、悲しい気持ちはどっかに吹き飛んで、私もんふふ。と笑い返した。

「お、やっと笑った。明音は笑ってる方がいーぞ。もうすぐで着くからこのままちょっと待っとけよ。」

って言った途端に頭にポンって先生の手の平が触れた。