懐恋。
この子は自覚があるのかないのか。隣で「さっちゃんかっこいい。」って言いながらテニスコートに釘付けの明音をチラリと見る。無自覚なら無自覚で無防備過ぎる。こいつは自分の可愛さに気付いてんのか?まぁ気付いてないだろうな。あっかんべーしたり、頬を膨らませたり。無意識にやる明音はずりー。それに、男慣れしてなさそうなのにこいつに男の幼馴染が居たことはちょっと想定外だな。明音は興味無さそうにただの幼馴染って言い切ってるけど俺の勘としては、絶対蓮って奴は明音に気がある。相手にされなくて可哀想という同情はしない。明音に気があるって事は俺のライバルになるわけだから。はぁー。と一つ溜息を吐くと

「先生、どうしました?」

ってすぐに気付く明音が無性に可愛い。ここは学校って事を忘れて、抱きしめちゃいたいぐらいだ。

「何もねーぞ。テニスコートは満足した?」

「はい!かっこいいさっちゃん沢山撮れました。」

「んじゃ、次行くかー。」

大事そうにカメラを持っている明音を見て、買ってあげて良かったなって思う。部員が5人以上じゃないと部費が使えないって、頭の固い校長に言われた時はどうしようかと思ったけど、俺が自腹で買った明音を思って選んだデジカメは俺の予想よりも大切そうに扱う明音を見て、俺の頬が自然と緩む。
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