課長の胃袋をつかみました
課長がポツリポツリと私の肩越しで話す。

先輩とお弁当食べていたこと、課長に気付かれていた。
私にはついさっき告白の現場を見られたことよりもこちらの方がよっぽど焦りだった。

いやだ、誤解されたくない。

「課長、違います!私は塚田先輩にお弁当を作ってたんじゃなくて……」

あなたのために!その先を言うことはできなかった。

唇を塞がれていた。
前みたいに触れるだけじゃなくて、しっかりとぬくもりを感じられるようなキス。
一瞬ではなくしばらくの間、お互いの熱を確かめていた口づけが終わり、課長の顔が離れるといつになく真剣な顔で私のことを見つめていた。

一方の私は耳まで真っ赤になっていると思う。

ついさっき好きだと自覚したばかりの課長からしっかり目のキスを、しかも人の行き交う繁華街でされてしまった。

私も課長も何もいえないまましばらくお互い見つめあっていたが、その沈黙を破ったのは私だった。

「あの、課長。もしかして私のこと好きですか?」

すると課長はしばらく言葉の意味を噛み砕いて理解しようとしているのか何も反応はなかったが、次の瞬間に私顔負けのレベルで顔を真っ赤に染めた。

なにそれ、かわいい。反則。

課長はしばらく顔を赤く染めたままゴニョゴニョと何かをつぶやいていたが、私の目を見つめ直すと居住まいを正してこう言った。

「プロポーズしたんだぞ、好きに決まってるだろう。」



< 21 / 28 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop