課長の胃袋をつかみました
桜の花も盛りを終え、木々の緑が目立つ頃に彼女はやってきた。

「茅野わかばです。
本日からこちらでお世話になります。」

爽やかな風が吹いたような気がした。
女を前面に押し出すようなスタイルではない。
ただ自然体に微笑む彼女が眩しいと思った。

その頃の俺はとっくに別れた元カノにつきまとわれたり、ビジネスであっただけの相手にしつこく言い寄られたりと、いわゆる女！な奴らに辟易していたから、だからこんな感情を抱くんだろう。
ただそんなふうに片付けた。

しかし彼女と仕事をするうちに、それが間違いだったと気づく。

彼女の表情や仕草や行動や、その全てに惹かれる。目が離せない。

ああ、年甲斐もなく一目惚れなんてしちまったなぁ。

望みは薄い。
彼女は周りの女性とは違う。
俺の顔や地位には魅力を持たないだろうし、そんな彼女だからこそ好きになってしまったのだ。

歳も離れてる、俺が役職持ちであるのも彼女に取っては二の足を踏ませるに決まってる。

俺は31にもなって拗らせてしまった恋心にひっそりと蓋をした。
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