課長の胃袋をつかみました
本屋で時間を潰していると課長が現れた。

「すまん、待たせた。」
「いえ、大丈夫です。お目当ての本も買えたので。」
「じゃあ行くか。」

電車に乗って一駅、この街は素敵なブティックなどが建ち並ぶエリアでご飯を食べるというイメージはないんだけどな…

課長について行くこと5分ほどで課長はある店に入ろうとした。

「か、課長。ちょっと待ってください。あ、あの目的地はここでしょうか?」
「そうだけど。」

そこはいかにも女性が喜びそうなキラキラした貴金属類が並ぶお店だった。

「か、課長。何が目的で?」
「それはもちろんお前の婚約指輪選びに決まってるだろう。」

沈黙が流れた。
課長は不思議そうに私のことを見つめている。

「課長、お腹すきました。ご飯行きましょう。」
「いや、どっちかっていうとこっちが目的だから。さっきも言ったろ、ご飯“も”行こうって。」
「いえ、お腹がすきすぎて死にそうです。どうか一生のお願いです、ご飯行きましょう。」

私の決死のお願いが届いたのか、課長は渋々貴金属店を跡にした。
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