課長の胃袋をつかみました
「玉子焼きが本当に美味しかったから。」
「そ、それだけ?」
「それだけだけど俺にとっては大事なことだよ。お前の玉子焼きは俺のどストライクだったんだよ。この玉子焼きを一生食べていたいって思ったから。」

言ってることはちゃんちゃらおかしいが、課長の目は真剣そのもので、ちょっとグッときてしまった。

「それだけで私に決めていいんですか。もっと魅力的な人がたくさんいます。課長はモテるんですから選り取り見取りですよ。」
「お前は十分魅力的だよ。玉子焼きうまいし。」
「私の魅力は料理だけですか!?」
「いや、他にもたくさんあると思うよ!……今急には出てこないけど……」

なんだよ!それは!

「今付き合ってるやつとかいるのか?」
「付き合ってる人はいないですけど…」
「もしかして好きな人?」

好きな人はいない…と思う。
塚田先輩のことはよくわからない。
かっこいいし優しいし、きっと付き合ってと言われたら喜んでOKするとは思うけど。

「はい。」


はっきりとした答えは出ないけど、課長より好意を抱いているという点では好きな人。
ずるいとは思うけど、これであきらめてくれるかもしれないからそういうことにした。
課長は最近働き詰めだったから、きっと頭がよわくなっていたんだ。
だからこんなことを…
思わず課長に同情していると、課長が何を思ったかにっこりと笑ってこう言った。

「付き合ってないならまだ俺にもチャンスがあるってことだろう。」
「え……」
「俺は絶対にお前を振り向かせて、お前と結婚する。好きな奴のこと忘れさせて俺に夢中にさせてやる。」

これはめんどくさいことに塚田先輩を巻き込んだのではないだろうか…
私は先ほどの自分の考えを後悔した。

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