課長の胃袋をつかみました
次の日の朝、アパートの前で待っていると一台の車が目の前で止まった。

「おはよう。待った?」

スーツじゃない課長は憎らしいくらいかっこよくて、きっとファンの女子社員が見たら大興奮だろう。

「いえ。新鮮ですね、課長の私服なんて。
「茅野も。なんかドキドキする。」

そんな恥ずかしいセリフを言われたら、いやでも課長のことを意識してしまう。
思わずドキドキと胸が高鳴る。
もちろんこれはときめきの。

助手席のドアを開けて私をエスコートし、彼も車に乗り込む。

車ってなかなかに密室だよな…
なんだか恥ずかしくてまた意識してしまう。

固まって話せないでいるとスピーカーから聞き慣れた音楽が流れてきた。

「この歌…私が好きなアーティストのだ…。」
ひとりごとのように呟いた。
「驚いたな。俺も好きなんだよ。まだ有名じゃないから知ってる人も少ないのに。なんかうれしいな。」
課長は無邪気に笑う。
「ほんとですね。まわりにファンの人がいなかったからすごくうれしい。」
それからはそのアーティストの話で盛り上がり、気づけば映画館についていた。

「何見るか決めてないんだけど…何か見たいのある?」

映画のポスターがズラリと並んだところへ来ると、私が好きな映画監督の新作があった。

「これがいいです。この監督さん好きなんです。」
「あ、新作やってたんだ。俺も好きだよ、くだらないけど奥が深い感じしてさ。」
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