最後の手紙
じんくんへ
親愛なるじんくんへ


じんくんが逝ってしまって2日が過ぎました。
私はあなたの居なくなった生活にまだ慣れていなくて、時折押し寄せてくる寂しさに身を引き裂かれそうになりながらも、それに委ねています。


12月の中旬頃、いつもと変わりなく健康そうに見えるあなたが血尿をするようになり、心配だから病院で見て貰った時が、今思えば始まりでしたね。

それからみるみる具合が悪くなり、歩けなくなり、食べれなくなり、その2ヶ月後にあなたは私のかたわらから旅立ちました。

あなたが旅立つ前夜、一晩中鳴いていましたね。

いつもの発作と違うと感じた私は、私達の時間の終わりが近い事を察しました。

近い未来、あなたの暖かくて柔らかい体に障る事が出来なくなるんだと思ったけど、まさかその次の日にそれが現実になるとは思ってもいませんでした。

まだ、病院に行って点滴などの処置をしてもらえば大丈夫だと思っていた私は、あなたに

「お願いだから明日の朝まで頑張って!」

と泣きながらお願いしました。


あなたは普段とてもクールで私の言う事なんてろくに聞かなかったのに、何故かその私の願いは叶えてくれましたね。

一晩中苦しんでいるあなたに私がしてあげられる事を考えた時、一つしかありませんでした。
また、何回も私を呼ぶあなたの声で、それが正しい事なんだと思い、私はあなたのそばに居続け、まだ暖かい体を何度も撫でました。

一晩明け、朝8時、あなたの様子がさらに悪くなったと感じた私は、まだ病院も開いてないのに、あなたを連れ、先生の自宅を訪ねました。


その日病院は休診日だったのですが、先生は快く対応してくれました。

「間に合った。これでまだ大丈夫」

馬鹿な私はこの期に及んでもそう考えてました。

先生はあなたを見るなり
「良くないね」
と言いましたね?

私は、ここ毎日そう言われ続けてたので良くないという言葉を危ない、に変換する事ができませんでした。

「あんた、先生に会う為に頑張ってくれてたん?あんた、そんなに先生好きやったかね?」

という先生の言葉にハッとさせられ、じんくんの気持ちを察しました。

自分の気持ちばかりに囚われて、じんくんにはじんくんの気持ちと考えがある事を初めて気づかされました。

と同時に、本当に終わりが近いという事を実感させられました。

今思えば、何度も何度も終わりを感じていたのに、あなたが息を引き取るその瞬間まで、リアルな感覚はなかったのだと思います。

「今晩あたりが山かもしれない」

そう思いながら病院をでました。

助手席にあなたをのせて、車を走らせた瞬間堪らず号泣しました。

あなたはまだ生きているのに泣くのは早い、しっかりしなきゃ!と思い、泣きながらかたわらにいるあなたへと視線を投げかけた時でした。

それはあなたが体をのけぞらせ最後の一息をした瞬間、、、。




私とあなたの時間、16年という時の最後です。


あれからいろんな記憶をつなぎ合わせて、あなたの気持ちを考えました。

私はあなたを薄情者と思っていたけど、実はそうではなかったという事。

あなたの苦しむ姿を見たくない私に、悶絶する姿を一度も見せなかった事。
最後の死の瞬間を見るのも本当は怖かった。

ご飯が食べれなくなったあなたに、栄養を与える為のチューブを取り付けつるか、そのまま何もせず見守るかの決断をせずに済んだ事。

亡くなる前日、私を呼び続けた事。
腐っても飼い主なんだ、と実感できました。

そして何より、私があなたの死を異常に怖がっている事を察し、全て自分で解決して逝ってくれた事。


精神的にあなたに依存しきっている私に、あなたは徐々に、そして簡潔に、自分が私のそばから居なくなる事への準備期間を設けてくれました。


情けない飼い主で本当にごめん。



でも、まだ辛い。



私は信じているよ。
いつか虹の橋であなたと会える事を。
薄情なあなただから、虹の橋には来ないかもしれないって最初は思っていたけれど、あなたとの事を、こんな風に言葉にして綴ることで、あなたの気持ちを知り、あなたがどんなに私を愛していてくれてたかも知ることができたから。


あなたは私の事が大好きだから、必ず虹の橋で待ってくれている。


時と共にこの痛みもいつかは薄れ、また新たな出会いや別れも経験するでしょう。


大丈夫。まだ生きていける。


あなたと再び会った時に、困った顔をされては私も立つ瀬がありません。

あなたに貰った愛を、
あなたに学んだ愛を、生命を
私の中で満開にし、次に繋いでいく。


ありがとう、じんくん。
そしてお疲れ様でした。


また会える日まで









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