モブAだって恋をする
「なにしてんだよ?」
その時、私の場所が影になった。
顔を上げるとそこにいたのはクラスメイトの筒井(つつい)。べつに私は驚かなかった。
だって私が先生に片思いをしてることを何故か知っているし、こうしてなにかと絡んでくるヤツだから。
筒井はすぐに私の手元のスマホに気づいて「ふーん」と意味深な声をだす。
「引くでしょ」
「なにが?」
「自分の恋が叶わないから幸せそうなふたりをぶち壊してやろうと思ってんの」
ふたりは私を恨むだろうね。
でもそれでもいいよ。たかがモブAで終わるぐらいなら、恨みのひとつやふたつ買って印象付けられたほうがまだマシだよ。
「べつに引かねーし。だって俺もお前が傷心で精神的に弱ってると思ってここに来たんだよ」
「なにそれ」
「片思いなんて多少歪んでなきゃやってられねーってことだよ」
意味がわからないと言いたいところだけど、たしかに長く片思いをしすぎると歪んでくるのは正しい。
純粋に好きな人がいるだけで毎日楽しいとか、目で追ってるだけで胸を踊らせて、日常が薔薇色に変化していたあの頃。
先生が幸せなら私も幸せなんて、相手のことを
一番に考えられる人にはなれなかったよ。
私は自分も幸せになりたい。
先生の特別になりたかったんだよ。