【完】好きなんだけど、責任とってよ


奈津は相槌を打って帰っていった。



今日の奈津は素直だな。なんて思いながら必要最低限のものしかない無駄に広い家の中に入った。


お風呂に入る時も歯磨きをしてる時もベッドに入った今も考えるのは奈津の事だった。



『私は奈津の本当のお母さんじゃないの。だから奈津どこか素っ気なくて』


悲しそうに顔を伏せる奈津のお母さんに



『私の両親は愛に生きた人です。私から見ても羨ましいくらいラブラブで私よりも夫を、妻をって私は中学の時には一人暮らしを始めたんです。』


いきなり語り出した私に奈津のお母さんは思わず手を止めて私の顔を見る。



『私は産んだだけで親だなんて思えません。奈津のお母さんは間違いなく今私と話している貴女です。』



『莉子ちゃん、ありがとう。…奈津を産んだ人はね本当に適当な人で奈津にご飯さえ与えなかったの。虐待もあったみたいだし。結局は他に男を作って逃げていった。旦那とは中学、高校の同級生で困ってたから助けてあげたって言いたいけど私の初恋だったの。仕事ばかりで奈津の面倒まで見きれないって言い出した時はどしばいてやったわ。結局は惚れた方が負けなのよね。』



目に涙を溜めて懐かしそうに語る奈津のお母さんはほんとつに素敵な人だと思った。



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