逆転バレンタイン!?〜お前のチョコは食えねぇわ〜
「じゃあ……」
なんで?って聞く前に、体はまた包まれる。
「す」
「す?」
「すき焼き」
「は?」
腹減ってんのかなって思ったけれど、それを口にするより先に横山が叫んだ。
「すき焼きじゃなくって!」
「う、うん?」
「好きだから!本命チョコ渡したっかっただけ!」
……うそ。
「あたしのチョコは食べれないって散々言ってたくせに」
本当は嬉しいくせに、素直になれないあたしはそう言って、照れ隠し。
横山は、少し体を離して、顔が見れる位置に来ると、思いっきり、破顔した。
「好きな子が作ってくれたものなんか、勿体無くて、食えねぇだろ?」
「あれってそういう意味だったの!?」
「当たり前だろ?ばか」
横山はあたしの頬に触れて、目を合わせる。
「ドジなとこも、佑美と俺が喋ると不機嫌そうだったお前も、全部、可愛いって思ってるよ」
横山らしくない、甘い甘い言葉に、あたしも笑って、彼にしがみついた。
「あたしも大好き!」
佑美ちゃんのメッセージ通り、素直になって、あたしは横山にグイグイと額をこすりつける。
「ホワイトデーのお返しはお前とのデートな」
「もちろん、いいよ!」
なんだか、男女逆転してるけど、あたしたちはこれでいい。
これがいい。
佑美ちゃんのメッセージカードに書かれていた『早くしないと他の男子に取られるよ』という言葉に背中を押されたらしい横山と教室に戻ると、満面の笑みを浮かべた佑美ちゃんがいて。
お互いの恋が叶った祝杯に、とお茶で乾杯したのは、もう少し後の話である。