逆転バレンタイン!?〜お前のチョコは食えねぇわ〜
「佑美は何か作んの?」
会話を続けてきたのは、あたしじゃない。
あたしの横の席で昼ごはんをがっついていた横山(よこやま)だ。
何故か、やたらとあたしたちに絡んでくるこいつ。
「私はガトーショコラかなぁって思ってる」
「お、いいなぁ。佑美が作ったら、マジで美味そう」
横山は佑美ちゃんにはとても優しい。
多分、彼はこの思わず守りたくなるような、佑美ちゃんのことが好きなんだろうなって思う。
思うから……あたしたちに絡んで欲しくない。
「俺の分も作ってよ。俺、甘いの大好きだから」
ほら。佑美ちゃん見て、デレデレの横山。
あんな顔見たくない。
苦しいもん、辛いもん。
「バレンタイン?あんな面倒なことよくするよね」
胸の苦しさを誤魔化したくて、思ってもいないことを言ってしまう。
バカだ、あたし。
ほんとは、あたしだって、横山に渡したいのに。
そんな本音を心の奥にしまうと、横山はあざ笑う。
「俺はどんなに頼まれても、榛名のチョコだけは食えねぇわ」