逆転バレンタイン!?〜お前のチョコは食えねぇわ〜
ひどい言われように、眉根を寄せたあたしを見て、佑美ちゃんが慌てたように言う。
「横山くん。言い過ぎ!」
しかし、佑美ちゃんの言葉など耳にも止めず、奴はヘラヘラ笑った。
「だって、こいつが作ったチョコだよ?何入ってるか分かったもんじゃないじゃん?ぜってー腹壊すって」
相変わらずの言われよう。
でも仕方ないか。
「こないだの調理実習散々だったし」
……あたしは、この前、授業でやった調理実習を思い出す。
そう。横山はあたしと同じ班だったためにとんでもない目にあったのだ。
「だってさ。大さじのスプーンと小さじのスプーン間違えるんだぜ?そんな奴のお菓子とか信頼できる?」
……ごめんなさい、だ。ほんと。
小さじ2杯の醤油でいいのに、大さじ2杯入れてしまったのだ。
激辛炒飯になって、原因があたしだと突き止めた横山に随分怒られたことは、記憶に新しい。
そして、こっぴどく怒られた後は、馬鹿にするみたいに笑われたのだ。
「だから、俺、お前のチョコ"だけ"は食えねぇわ」
やたらと『だけ』を強調されたあたしは自分のしたことは棚に上げ、横山を睨むつける。
「頼まれなくても、あんたなんかに、作らないわよ!お金のムダ!」
売り言葉に買い言葉でそう言いきってしまった。