背中
男性的なコートとの逢瀬は相変わらず続いていて、夫に買ってもらった洋服やピアス、生活費から貯めたお金でバーニーズでワクワクしながら赤いロッシにあわせて買った、ワインレッドにRGBのRを更に強く加工したようなミニバッグをあわせ、少しの罪悪感をGUCCIのギルティに纏わせて家を出る。
罪悪感をまといながらの行動でも実際の行動には変わらず、少なくとも行動に移すということはそこにメリットがあるからで、罪悪感と恋愛の楽しさを秤にかけた結果として行動したに過ぎない。
逃げ道が必要だとタラレバ娘で言っていたシーンがあって、そのシーンを録画でみたときは何も感じなかったのに、何故か電車の中でその時の主人公の泣き顔のような笑い顔のような罪悪感と満足感が交じり合った表情がやけに良く思い出された。

気付けばあっという間に時間が経っていて、横に置いたiPhoneの表示に帰りの時刻が迫っている表示が次から次にお知らせされていて、全くその時間に集中できず、早々に帰路に着いた。アプリで玄関のロックが開くように設定されていて、誰かが開けるとそれが逐一お知らせされる設定になっているため、高校生の塾帰りの時間よりも早いのではないかという時間に夫が玄関ロックを開けたという事実にげんなりしながら電車の到着駅の知らせを聞く。運転手付きの生活であればこんな思いはしなくて済むのかと昔の婚約者を思い出したが、それこそ運転手の懐柔の金銭的面倒さと裏切りのリスクに日々怯えて過ごすことになるのではないかと、タラレバのまま楽しい想像を頭の中でひき肉とパン粉のように捏ねくり回している内に有難いことに時間はどんどん過ぎている。
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