街が赤く染まる頃。ー雨 後 晴ー



「━━よっしゃ、掃除終わり!
帰ろうぜ。」


「うん。」


ゴミも捨て、教室に戻ってきた俺らはやっとカバンを持ち、教室をでた。


土曜日の放課後は他の放課後よりも静かで
まだグラウンドでもどの部もまだ活動はしてなくて

静かでポカポカした陽気だけがここを包んでいた。


「気持ちいいな~」


「そうだね。
今日は暑くもないしね。」


この時期が一番好きだ。
だんだんひんやりしていく、この時期が。


「あ、そうだ。
今日大翔んち行ってもいい?」


「いいけどなんで?」


「あれから練習して、オムライス上達したの!
だから見返してやろうかなって。」


……見返してやろうかな、って。
そんな言葉が心優から出てくるなんて今までなかったのにな。

しかもその笑顔。
なんなんだよ。可愛すぎか。
輝いて見えるのは俺の錯覚?


「……大翔?」


「あ、あぁ、ごめん。
じゃあ今日の夕飯は心優のオムライスか。
めっちゃ楽しみにしとくわ。
帰りスーパー寄ろ。」


「うん。」


なんか、また可愛すぎて
俺はさりげなーく、また手を握ってみた。
もうすぐ靴箱つくから、すぐまた離さなきゃなのに。


「……最近さ、大翔急に彼氏っぽくなってきたよね。」


「彼氏っぽくって!
俺は正真正銘、心優の彼氏だっつーの!」


「そうなんだけどさ」


もうすっかり、心優の虜となった俺は
正真正銘心優の彼氏だよ。

心優が知らないくらいにな。



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