街が赤く染まる頃。ー雨 後 晴ー
「なんで学校、辞めちゃったの?」
ここでようやく、智樹が口を開いた。
聖女のレベルの高さに照れてんのか?
やけに優しい言い方だな。
「そりゃあんなことがあったら学校、いられないよね。」
ずっと控えめに話してくれていた子ではなく、その隣にいた子がそう言った。
「あんなこと?」
それはそれは、詳しく事情を知ってそうな感じで。
「華。それは口外しちゃダメって言われてるじゃん。
バレたら私たちが怒られるよ?」
「あ、そうだった。
ごめんなさい、これは言えないことでした。」
「え、そこまでいっておいて?
俺ら絶対他言しないけど、それでもだめ?」
「ごめんなさい。決まりなので。」
……気になんじゃん。
あんなこと、って
「……じゃあさ、仁科ってどんなやつ?
俺ら仁科の知り合いなんだけど、全く喋らないんだよね。」
なんの言葉も発しない。
どんな声をしているのか、俺らは全く知らないんだ。
「どんなやつ…と言われると、私たちが見てきた心優はとても優しく、礼儀正しく、美しく、可憐で、頭のいい非の打ち所がない才女でした。」
……非の打ち所がない、ねぇ…
今は挨拶すらしませんけどねぇ。
「本当に友達が多かったんです。
……正直、憧れている子は多かったと思います。
だけど…」
「……けど?」
「…ごめんなさい。これ以上は言えません。」
言えねーのかよ…
そっからが気になんのに。