街が赤く染まる頃。ー雨 後 晴ー



さっさと靴を脱ぎ、鞄を適当に下ろし、とりあえず俺はそこらへんに座って手紙をあげた。
心優の字が切れないように、そこだけは丁寧に、慎重に。


『━━七瀬大翔様

私がこちらへきて、もう一ヶ月がたちました。
智樹や青木さんは元気ですか?まだ仲良くしていますか?
遅刻やサボり癖は直りましたか?
なんだか気になることばかりです。
私はこちらへきて、右も左もわからない状態を脱し、現在夢に向かって歩み出しました。
中卒な私でも、こちらの皆さんは私を受け入れてくれて、日々精進しているところです。

あのね、大翔。
大翔が公園に一人でいる私に話しかけてくれたこと、本当は嬉しかったんだ。
私なんかに気にかけてくれて。
そのあとの台風の日も、本当は嬉しかった。
私なんかの話をちゃんと聞いてくれて、聞いた上で私に厳しいことをいったり、でも幻滅なんかしないで私のそばにいてくれたこと、本当に嬉しかったの。
すごく遅くなっちゃったけど、あのときは本当にありがとう。餃子もすごく美味しかったよ。

胸を張れる恋なんかできなかった私だったけど、でも大翔を好きになってやっと私は胸を張れる恋ができたと思う。
大翔と出会って大翔を好きになったこと、私はまったく後悔してないよ。

たった2ヶ月とちょっとで、私は大翔にいろんなことを教わった。
あの2ヶ月間が、私にとって貴重な時間だったんだ。

大翔は言ってくれたのに、私が言い返すことができなくて、それだけが心残りでこの手紙を書きました。
ずっと手を振ってくれたこと、ちゃんと知ってたよ。
心からありがとうって叫んでくれたこともちゃんとわかってるよ。
だから、私も大翔に伝えたかった。
あの時は泣いちゃってなにも言い返せなかったんだけどね

大翔、いっぱいありがとう。
心から、大翔との出会いや時間に感謝しています。


またいつか、どこかで会えることを楽しみにしています。
そしてまた一緒に笑える日を心待にしています。
大翔の隣で笑っているときがなによりも幸せだって知ってしまったから。
そんな宝物をいつまでも忘れずに今日も頑張って生きています。
大翔の笑顔、大好きだよ。

━━━心優』



最後まで読んで、俺は手紙をおいた。

心待にしています。って
こっちのセリフじゃねーかよ。


封筒の裏には心優の住所は書いてなくて、返信不可ですって感じが心優らしくて、なんかまた笑ってしまった。


その手紙を封筒に戻そうと封筒を開けると、もう一枚中になにか入っていて、とりあえずそれを取り出すと
眩しいくらいに輝く夕日と、赤く染まった海外の街並み。

そして裏には
『明日もいいことあるよって、未来が叫んでる』
と、心優の字で残っていた。



「…っしゃー!!
バイト行ってくっかなー」


俺も、負けてられねーもんな。



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