街が赤く染まる頃。ー雨 後 晴ー
街が赤く染まる頃。
俺が見つけた紅一点。
「七瀬~、ちょっと来てくれ」
「はい!今いきます。」
━━あれから5年が過ぎた頃
"心優に負けたくない"
たったそれだけの決意だけで、俺の成績はあれよあれよと伸び始め、担任の強い意思で進学をした。
ま、金もないから奨学金借りて2年間だけの専門だけど。
唯一、心優に勝てた料理を伸ばしたくて、調理師になりたくて
俺は進学し、必死に勉強して調理師免許を取得して有名レストランのコックさんとして就職を果たした。
最初は皿洗いばっかで嫌にもなったけど、そんな日々を乗り越えた3年目、俺はやっと教えてもらえる立場にまでなった。
将来の夢はもちろん、自分の店を出すこと。
俺ならできる、そう自分自身を信じて毎日精進だけをしてきた。
「すみません、遅くなりました。」
だから今はこの料理長のもとで、この料理長の技術を盗むのに必死だ。
「あぁ、七瀬明日休みだったよな?
確か友達の結婚式でホテルに行くよな?」
「あ、はい。ジャパンホテルで…
それがなにか?」
そう、明日は智樹の結婚式。
23にしてデキ婚。
相手はもちろん、あの青木。
散々智樹が頑張った末、高校卒業式にてやっと実ったあの恋物語な。
智樹のデキ婚はまだしも、あのくそ真面目な青木がデキ婚ってのに驚きだけど。
「そこのホテルでスイーツの新作お披露目会があるんだよ。」
「スイーツ、ですか?」
「そこにな、この前パリの審査会で最優秀賞をとった人も来るんだ。
その人はまだ無名の若い女性で、無名だからこそうちの店に引っ張れるかもしれない。」
「はぁ…
でも俺なんかでいいんですか?」
「あぁ、本当は俺が行きたかったんだけど予約の関係でどうしてもいけなくてな。
それに、七瀬は腕はまだまだ未熟だけど舌は一人前だよ。
その舌で、俺はお前を採ったくらいだからな。お前の舌には俺も信用してる。」
「ありがとうございます。」
「だからな、実際その人のスイーツを食べて、もし良かったら名刺を渡してきてくれ。
もしその気があればぜひ、とな。」
「…わかりました。
でも何時ですか?式は昼からなので…」
「16時。行けるか?」
「あ、はい。」
16時…なんとも絶妙な時間だから。
式が終わって、二次会に行くまでの空き時間で行けるじゃねーか。
すげーいいタイミング。
「じゃあ頼むな。
これ、俺の名刺。ちゃんと渡してこいよ。」
「はい。」