街が赤く染まる頃。ー雨 後 晴ー



「…じゃあ俺帰るわ。」


智樹の結婚式の二次会もあるしな。


「うん、わかった。
じゃあまぁ一応タクシー乗り場まで見送ってあげる。」


「はは、そりゃどうも。」


エレベーターが一階に到着し、俺らは一緒にロビーを歩く。
こんな風に二人で歩くのが懐かしくて、あの頃の記憶が甦ってくる。
もう5年もたつのに、一度だって忘れたことなかったつもりだったのに

…記憶の中にあった心優とはやっぱり違っていて、実際の心優は俺の中にあった心優よりも遥かにいい女で…


「……友達の墓には行けたか?」


「…ううん、まだ。」


「じゃあ、今度俺が一緒に行ってやるよ。
少しは前に進んだとこ、見せてやれよ。」


でも、俺の中にあった心優と変わらず弱虫で、傷跡を一人では治すことができなくて
……だから俺がそばにいて、一緒に治してやりたくなる。


「…ありがと。
……あ、すごい…」


「……すっげー。久々に見たな。」


ロビーを抜けて外へ出れば
そこには真っ赤に染まった街が広がっていた。


「…いいことありそうだね、明日も。」


「……そうだな。
きっと明日もいい一日になるな~。」


…でもな、俺にとっては今日もいい一日だよ。
だってこの夕焼けをお前のとなりで見れたんだから。


「…ね、あの日言ったこと、まだ覚えてる…?」



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