街が赤く染まる頃。ー雨 後 晴ー
「私、少しは前に進んでるんだね。」
店を出てすぐ、心優はちょっと明るい顔してそんなことを言った。
「だから前行ったじゃん。
前進んでなかったら、お前は餃子を包むこともなかった。
オムライスが作れるようになったのも、スイーツで最優秀賞をとれたのも
全部、自分で前に進んでるからなんだよ。」
「……そっか。そうだよね。」
毎日がなんとなく過ぎてっても、なんだかんだ人間って成長するよな。
きっとどこかでわかってる。みんなわかってる。
立ち止まってなんかいられないんだって。
今のままでいることはできないんだって。
だから本当はみんな必死に今日を生きてるんだよな。
「……ところで、どこに行くの?」
「野いちご公園かな。あそこ広いし。」
「ふーん?そっか。」
二人きりになりたいわけじゃないけど、でも人に話を聞かれるのもなんだか嫌だし
公園が無難だよな、やっぱ。
「そういや海外ってどこ?
どこ行ってたわけ?」
「フランス。スイーツだしね。」
……めちゃくちゃ洒落てんな、おい。