街が赤く染まる頃。ー雨 後 晴ー



「中学で両親死んでさ、そっからはもう怖くて仕方なかった。
俺どうなるんだろう、って誰にも頼ることができなくて怖くて仕方なかった。

中学ん時は親戚の家に引き取られたけど、でも伯父さんたちの本音聞いちゃってさ
……俺が負担になってるって改めてわかってさ
その時思った。
俺、一人で生きてくしかないんだな、って。」


あの頃は絶望だった。
親に守ってもらえなくなって、俺の面倒見てくれてた親戚の家も本当は嫌々で

俺の生きてく場所が、わからなかった。


「高校入学前に一人暮らし初めて、そしたらさらに怖くなって
高校入学したらしたで彼女と別れるし
少しずつ、自分の居場所がわかんなくなってくって感じ。
だから毎日のように違う女抱いて、そんなことでしか存在価値を見出だせなくて」


あの頃が一番虚しかった。
誰一人として、俺を本気で相手してくれる人がいなくて

俺、なんのために生きてんだろ、って。


「そんなくだらない毎日が過ぎていって、毎日なにがあったかなんて全然覚えてねぇけど
でも、1つだけ覚えてることがあってさ」


「なに?」


「……心優が転校してくる前日は、街が赤く染まっていた。」


「え?」


「見事なくらい、街を染める夕日だったから
明日くらい、いいことあるよなってあの空に賭けたんだ。

そしたら心優がきた。」


女とバイトだけで終わる夏休み。
つまんねぇ夏休みだったな、なんて思って外に出たら、街が真っ赤に染まってたんだよな。

あの夕日に願ったんだよ。
"明日、いいことありますように"ってな。



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