街が赤く染まる頃。ー雨 後 晴ー
「…俺さー、情けないことに親の墓ってずーっと行けてなかったんだよ。」
「え?そうなの?」
「つん。いつも行こうと思って花まで買うのに、その寺までつくと結局中には入れなくて。
だから親戚の誰かが行ってなかったら汚れてんだろうなって思ってまた行こうとするけどまた行けなくて…の繰り返し。」
「…でも、行けたんでしょ?行けなかった、って言い方なら」
「うん。
……心優が、自分と闘ってくるってここを離れたときな。
あのとき心優と別れたあと、その足で墓に行った。
花も持たず、掃除道具も持たずにな。
俺も負けてられねぇ、と思って。」
「…そっか、よかったね。」
「墓はやっぱ草がかなり生えてたけど、思ったより綺麗でやっぱ伯父さんとかが来てくれてたんだな~と思って、その週末には出てってから一度も行ってなかった親戚の家にも行ってさ。
菓子つきで。
なんか俺さー、心優に偉そうなこと言っときながらいろんなことから逃げてたな~と思って。」
毎日をなんとなく生きてたんだよな。
なんにも考えず、いつもと同じ景色のなかでいつまでも変われずに、変わってく現実から逃げて
ひとりぼっちなんだって現実すら受け入れずに
ただなんとなく、生きてただけだった。
「俺らを見下して、なにも話さない誰とも関わろうとしない心優が来て、本当にむかついたけど
…友達が死んだことをちゃんと受け入れてただけ、心優の方が大人だったんだろうな。
そんな心優だったから、俺も惹かれてったんだろうな。」
「……え?」
親が仕事ばっかで一人で留守番ばかりしてた智樹
親に見捨てられた心優
結局俺は、そうやって強く一人で生きていくやつらが好きなんだ。