街が赤く染まる頃。ー雨 後 晴ー



━━━部屋を出てエレベーターに乗ってすぐ、俺は心優の手を握る。

それだけじゃ心優は赤くなってくれないけど


「……ん?なに?」


握られた手を離して心優が手のひらを見れば


「俺んちの鍵。
いつでもきていいよ。」


すぐに幸せそうに笑ってくれる。


「…ありがと。」


もう俺、こいつが好きすぎて仕方ない。
どんどん俺を幸せというものに引きずり込んでいく。


「あ、そうだ。
あれつくってよ。ホットケーキ!赤いやつ!」


「えー?いいけど、お披露目会の時みたいな凝ったやつは作れないからね?」


「別にいいよ。お手軽なやつのが俺好きだし。」


「はいはい、わかったよ。」


そんなこんなであっという間に地下駐車場について、俺の車に向かおうとした時


「……あれ、なにこれ。」


なんか俺の車の鍵に見知らぬ鍵がひとつ。
……え、待てよ?これ…


「……大翔に先越されちゃったけど
いつでも来ていいよ。……泊まりでも。」


そうやって可愛く言う彼女をまた好きになる。
好き、すき、スキ。

どうしようもなく彼女が好きだ。



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