街が赤く染まる頃。ー雨 後 晴ー



……じゃあなんでこいつ、今ここにいるんだ?


「…ならもっと早く言えよ!」


「何度も言おうとしたわよ!
それを無視したのはあなたでしょう!?」


う……まぁ、確かにちょい強引ではあったかもしれねーけど…
……俺が悪い、か…?


「帰る。傘。」


「え、おい。やめとけよ!」


「まだ少しじゃない。別に大丈夫よ。
学校もどって迎え待つから。」


「やめとけって!ここ、こうなると一気に水嵩が増すんだよ!
あっという間に腰くらいまで水位が行く。
大人しくここにいろって!」


「じゃあ私はいつ帰ればいいの!?
台風は夜来るのに!」


「そう、だけど危険なのわかってて行かせられるかよ!
だいたい川が氾濫したらそれどころの騒ぎじゃないだろ!」


「だからすぐ帰るんじゃない!
いちいち止めないで!うざいんだけど!」


「……わかったよ!じゃあ勝手にしろよ!
ほらよ、傘!」


あー、本当むかつくやつ。
こっちは親切に言ってやってんのに。

すべてありがた迷惑かよ。

くだらね。雨戸閉めよ。


……もうすでに、あんだけ水位が増してんのに。
そりゃ道路だけならいいよ。
でも水路と境ももうわからなくなってんのに。

足突っ込んで転けても知らねーぞ。
足ハマっても知らねーぞ。

制服びしょ濡れになっても知らねーぞ。


「……あぁ!もう!」


なんで俺がこんなこと考えなきゃいけねーんだよ!



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