街が赤く染まる頃。ー雨 後 晴ー
結局俺は、着替えもせずにまた家を飛び出した。
傘をもって、階段駆け降りていくと、階段を降りたところに髪の長い女が突っ立っていた。
「……悪かったよ。
でももうしかたねぇんだし、諦めて俺んちで雨が弱まるの待ってろよ。
俺別になにもしないし、お前も俺のこと嫌いならちょうどいいじゃん。」
俺がそういうと、仁科はいつも通りなにも答えず、しばらく考えた末にこちらへ振り返った。
「傘、持つわ。」
そういって傘だけ持ち、また俺は階段を上がっていった。
「どうして、私に構うの?
昨日あそこまでいったのに。」
初めて、仁科から話しかけてきた。
その事実さえも、俺はもう驚かない。
知れば知るほど、こいつは普通の女だから。
「特に理由なんかいるわけ?
ただ、お前が困ってるように見えたから。
それだけだよ。」
「……そう。」
「あ、ちなみに俺軽い男で基本的に誰とでも寝る男だけど「知ってる。見てればわかる。」
「あ、そ。
でも俺、自分んちでやろうとは全く思ってねぇし、自分から誘うこともないからご安心を。
っていうか、智樹以外をここに連れてきたのも初めてだし。」
「……どうして?」
「だってめんどくせぇじゃん?それで付きまとわれたら。
一人暮らしだって知られたら家来たいとか言うやつ出てくるだろうし、暇だから来ちゃった、みたいのもうざいし。
なら最初から教えねーよ。」
女と関わってる分、面倒なことも多いしな。
「でも、お前はそうじゃないだろ。
家に来てやりたいとかも言わないし、そもそも俺のこと嫌ってそうだから別にいいやって感じ。
言いふらされたら困るけど、お前喋らねーしな。」
だから、こいつになら言っても俺にはなんの不利益もないはず。