街が赤く染まる頃。ー雨 後 晴ー
「あ、そうだ。ちょい待って。」
CDを受け取り、帰ろうとした心優をとりあえず引き留めた。
一応、お礼を渡すのが礼儀だよな。
「……なに」
「そうツンツンすんなよ。」
可愛くねーな、相変わらず。
「これ、やるよ。
一応お礼ってことで。」
「なにこれ。」
「先月智樹と焼肉食いに行って、帰りにクジ引いたら当たったんだよ。
一等で会計半額券。
あと1週間で期限切れちゃうんだけどさ。
智樹今金ないっぽくて。」
「…で、私に?」
「そ。」
お礼として渡せる物もないしな。
金もないし。
「でも、私だって行く人いないし。
それにこういうお店行ったことないからどこにあるかも知らない。」
「は?え、ウソだろ?」
「こんなことで嘘ついてどうするの。」
……まじか。まじかよ。
こいつ、焼肉すら行かないのかよ…
「あ、じゃあ今日俺と行く?」
「……は?」
「いや、まじで嫌そうな顔すんなよ。
俺のことそんな嫌いなのかよ。」
一応友達やってんじゃねーのかよ…
「いや、そうじゃなくて
今日まだ買いにいかなきゃいけないものもあるんだけど」
「なに買うわけ?」
「文房具とか、本とか…まぁいろいろ。」
「あ、じゃあ俺も行くわ、それ。
俺も書道の筆とか買わねぇとだし。
それに焼肉って夕方にならねぇと開かないしな。」
「……別にいいけど
一緒に行く理由、ある?」
「別にいいじゃん、今ここにいるんだから。」
「あ、そ。
で、もう行けるの?」
「行ける行ける。
行くか。」
納得したように、心優は振り返って靴を履いた。
つーことで、俺も財布とスマホをポケットに突っ込んで、戸締まりをして心優と一緒に家を出た。