街が赤く染まる頃。ー雨 後 晴ー
━━HR後、休み時間
一時間目のために西館理科室へ移動する頃
「俺、サボるわ。
大翔適当に言っといてよ。」
智樹は教室を出ていった。
なんつーか、あんな元気のない智樹は初めて見たな……
で、とりあえず俺は教科書とかもって理科室に向かった、けど
「ちょっと来いよ。」
理科室に入ってすぐ、俺は心優のところへいき、心優の腕を掴み、心優の教科書とかも持って理科室を出た。
「ちょ、なに
もう授業始まる「サボるんだよ。」
「は!?」
そのまま、奥へと進んでいって
「え、ここって…」
ポケットから鍵を取りだし、俺は空き教室のドアを開けた。
「なんで大翔が鍵…」
「なんでもいいだろ。
見つかる前に入れよ。」
誰かに見られていないか確認をして、心優をさっさと押し込んで俺も入り、鍵を閉めた。
「……どういうつもり?
もうサボるんなら一人でサボりなさいよ。
勝手に巻き込まないで。」
「勝手に巻き込んだのはそっちだろ。
さっきのなんなんだよ。」
空っぽの空き教室、バレるから窓も開けることはできないけどひんやりしたこの空気の中、俺らは早速言い合いを始めた。
「あぁ、だってああ言えば諦めるでしょ。
智樹、大翔には敵わないって思ってるみたいだし。」
「でも他にもっとまともなこと言えるだろ、普通。
だいたい俺のことは一番嫌いなんだろ。」
「じゃあどういえばよかったのよ。
……私に好意を向けてるのがわかる智樹に、私はどういえば正解だったの?
あんな、いい人のかたまりみたいな智樹を傷つけるのは、1回だって嫌なのに」
苦しそうに、静かにそういう心優を見ていたら俺はもうなにも言うことができなかった。
誰のことももう傷つけたくないと、その切なる思いがひしひしと俺にも伝わってきて
俺は、ひとつの心優の心に気づけた。
「…心優ってさ、本当は智樹のこと好きなんじゃん。」
智樹をこれ以上傷つけなくないと
傷つけたくない存在になっているということに。
「……あんなに友達思いの人は、なかなかいないから。」
そう言う心優の顔は、やっぱり悲しそうな顔をしていた。
「バカなくらい大翔のことが好きで、あんなに堂々と大翔の親友だと言う男子はなかなかいないでしょ。
前に、大翔が席を外してた時に私、なんで大翔なんかと友達やってるのか聞いたことがあったの。
女の子のこと傷つけてばっかな男といてもいいイメージつかないでしょ、って。
そしたら智樹、
甘い笑顔振り撒いて女の子抱いたあとの大翔は、本当はウサギみたいに寂しくて震えてる。
好きでやってるように見えて、本当はそういうことすんの嫌いなんだと思うんだよね、って。」
……あれ、俺そんなこと智樹に話したことあったっけ…
好きでやってるわけじゃない、それは智樹にいってきたけど…
「大翔って本当はすごい一途で、親も早くに亡くしてるから愛されたくて仕方なくて女の子に喜ぶことするのに、
したあと自分で"なにしてんだろ"って思うみたいで、結局そうやって本当は
自分が愛したい女を探してるんだよ、って。
……なにも言わなくても、そこまで友達のことをわかってあげられる人、とっても素敵だと思う。
友達の悪いところを見つけてしまっても、その裏側を見つけてあげられる人。
私にはそういう友達、いなかったから。」
悲しい顔のまま、窓の外を見つめる心優の顔はどこかいつもと違って
……少し幼くて、可憐さはいつもよりもなかった。