街が赤く染まる頃。ー雨 後 晴ー
「……本当は、智樹のこと好きなんだろ。
ならそう言ってやりゃいいじゃん。」
「それでも私は智樹の気持ちには答えられない。
恋愛感情はないから。
……結局傷つけるなら、期待させたくないから。」
「だったらそのまんまそう伝えりゃいいじゃん。
友達として好き、くらい言ってやれよ。」
「智樹はまだ知らないから。
……私の過去。」
「だから?
あいつはそんなこと気にしない。
友達の悪いところを見てもその裏側をわかってあげられるって言ってたのは心優だろ。
少なくともあいつは
そんなことで人付き合いを決めるやつじゃない。
あいつは、どんなことがあったって自殺するような、愚かなやつじゃない。
見くびんな。
……だからさ、あいつのこともちゃんと見てやれよ。」
俺がそういうと、ずっと窓の外に向いていた心優の顔はこちらを向いた。
それはまたすごく冷めた顔で…
「大翔がそういうこと言うの、似合わない。」
「はぁ?」
そんな生意気な口を叩く女だけど、それでもなにかを決めたような、そんな顔をしていた。
「…にしても、智樹のことは好きだから本人には嫌いって言うなんてな。
あ、もしかして俺のことも本当は好き「それはない。」
……せめて人の話は最後まで聞いてから否定しろよ…
「ところで、ここの鍵はどうしたの?
なんで大翔が持ってるの」
「んー?だってここ、日中は太陽当たんなくて気持ちいいじゃん。」
「答えになってない。」
「……はいはい。
元カノの兄貴がここの卒業生なんだよ。
俺とは入れ違いなんだけど、俺がここに入学するって知ってたから卒業したら俺にここの鍵くれたんだよ。
ま、俺は高校入ってすぐその彼女と別れたんだけど。
その兄貴はクラスの文化祭の出し物をこの教室でやったらしくて
いつまでも鍵返すの忘れてたんだとさ。
その兄貴も兄貴だけど学校もずさんだし、俺が引き継いだってわけ。
そっからはここが俺のサボり場。
智樹にも教えてない秘密基地だから。心優も喋んなよ。」
「どうして智樹にも言ってないの?」
「俺にもさ、誰にも入ってほしくない城がほしいわけだよ。」
「……私はお互い嫌ってるから、別にいいやってことね」
「そういうこと。」
……なんて、嘘。
俺はもう心優のことは嫌いじゃない。
でも…そんなことをいってしまうと、きっと心優は俺にも気を使うようになるから
本音を言えるやつがいなくなってしまうから
…今は、まだ嫌いなままでいいわ。