街が赤く染まる頃。ー雨 後 晴ー
「ってかその喫茶店行ってどうすんの?」
「んー、なんかまた行きたい的なこと言ってたしさ、その下見?つーか
その元カレがいなきゃまた行けるじゃん。
だから。」
「ふーん。」
元カレねぇ。
でも、あんなことがあってまだ数ヵ月ってことだろ?
普通にいると思うんだけど。
そんなことでバイトまでやめるとは思えないし。
「…ってか、智樹って心優のことまだ好きなわけ?」
「んー、まぁ好きっちゃ好きだけど諦めてはいるな。
だって相手が大翔だしな~。」
……まだそれ言うのかよ…
「まぁ元々そんな気はしてたけど。
仁科ちゃん、大翔にはちょっと特別だもんな~。」
「だから、心優が俺のこと好きっつったのは智樹を諦めさせるための嘘だっつーの。
何回言えばわかるんだよ。」
「だって俺、自分で見た物しか信じないタチだし。」
「はぁ?じゃあ逆にお前は何を見てそう決めつけてんだよ。」
「好きな人の目線の先。」
「……心優が俺を見てたとでも?」
「その逆。全く見ないんだよ。」
「そりゃ、俺のことが嫌いなんだから当然だな。」
だいたいそれのどこが俺のことを好きだと思えるんだよ。
その要素はどこにあるんだよ。
わけわかんねーわ。
「ま、大翔にもわかるときがくるよ。」
「はぁ?」
「あ、
……ここ?まじで?」
いつの間にか、そんな話をしていたら、
コーヒーの看板の店の前についた。…けど
「……よく言えばレトロ。」
「ボロいだけだろ。
ここ、やってるわけ?」
ツルが伸びて、店の外観は草だらけだった。
隙間から見える壁はグレーだけど、元々は恐らく白かったはず。
「……あそこ、"open"って書いてある。
大翔、ドア開けてみろよ。」
「なんで俺なんだよ。
智樹が開けろよ。お前が来たがったんだろ。」
「そう、だけど……」
なんてヤイヤイ言い合ってると
「あ、お客さんかな?
どうぞ、開いてますよ。」
そんな声が聞こえて、振り替えると大人の女の人が立っていた。
「あ、ハイ…」
その女の人が開けたドアに、智樹は吸い込まれるように入っていったから
俺もそれを追いかけた。