街が赤く染まる頃。ー雨 後 晴ー
「俺、大翔よりイケメンな男、初めて見た。」
「うるせーよ。」
智樹なんて、俺と店員を見比べ始めてるし。
なんなんだよ。
「お客さん、大翔ってお名前なんですね。
俺と一文字違いだ。」
そういう店員の名札にはキレイな字で"大智"と書かれていた。
「ところで、なんにします?」
「俺苦いの飲めない~。」
「ジュースもありますよ。」
「じゃあコーラ!
大翔は?なんにすんの?」
俺は……
「……じゃあ、ミルクティを。」
「かしこまりました。」
この人が、心優の元カレなのかはわからない。
でも…もしこの人がいれるミルクティが美味しかったら
……この人には勝てる気がしないって、なぜか俺はそんなことを勝手に考えていた。
カウンターから見える窓の外の青空を見ながら、そんなことを考えてしまっていた。
「お兄さんさー、そんだけかっこよかったら、お兄さん目当てのお客さんとか来ない?」
「はは、そうですねー
若い女の子はなかなか来ないお店ですからね。
……でも以前一人だけ、女子高生が来てましたね。
常連さんの一人でした。
もう、ずいぶん見てないですが」
智樹のジュースだけを先に出す店員の顔は、少しだけ儚げに見えた気がした。
そんなことを言われると、智樹も俺も
やっぱりこいつなんじゃないか、と確信を求めたくなる。