街が赤く染まる頃。ー雨 後 晴ー
隣を歩いていても手も繋がない、触れることもない、そんな相変わらずな俺らだけど
……俺も、こいつのペースに合わせて歩けるようになっていた。
気づいたら先に歩いていることもなく、心優のペースを保って歩けるようになってて
日に日に、どんどん俺は彼氏となっていった。
「でもいくらくらいするんだろ。」
「どんくらいだろなー」
そして彼女のこいつも、俺に対してだけ話し方がすごく優しくなって、しかも心優から話しかけてくることが増えた。
智樹にも優しくなったと言えば優しくなったけど、それとはまた違う優しさを俺にも提供する。
自分の意思はあまり言わない、すべて俺に合わせる。
こんなどうしようもない俺に、かっこつけられる空気を提供してくれている、そんな彼女。
だからか、前の彼女とよくあった言い合いなんてものもなく、俺のすべてを受け入れてくれている気がする。
……本当、良い彼女なんだけどな。
「あ、そうだ。
大翔消ゴムも買っていきなよ?もうかなり小さかったじゃん。」
「あー、そういやそうだ。
よく見てんのな。」
「あんな消しにくそうな消ゴムないでしょ。」
……こんな、本当に些細なこともちゃんと見ていてくれるしな。
こいつと一緒にいると、本当に心地が良い。
刺激はない。それでも嫌なところはなくて、一緒にいればいるほど失いたくなくなる。
恋愛感情があるのか?と聞かれれば答えはNOだが、かといってこいつの彼氏の座は譲りたくない。絶対に。