街が赤く染まる頃。ー雨 後 晴ー
「……誰?」
「…聖凛の子。
ごめんね、行こ。」
心優はそういって、俺の方を見ることも、振り返ることもせずに前へ歩き出していた。
「…あの子は、特別怒ってんの?
心優のこと。」
「うん、そうだね。
…美奈子は特別にね。」
「……聞かない方がいい?」
俺のその問いに、心優は答えなかった。
…ってことは、俺の入っていい領域ではなかったみたいで、
俺は一人、モヤモヤした感情を抱えることになった。
そんな感情と戦いながらも心優と歩いているけど、その空気がなんとも気まずくて、お互いなにも話すこともなく足だけが動いていた。
……けど、途中で鰻の蒲焼きのいい香りが漂っていて
『ぐ~~…きゅるきゅるきゅる…』
俺の腹だけは、黙っていられなかった。
「……はは、そんなお腹すいたの?」
でも、そんな俺の腹の虫のおかげで、心優はまた可憐に笑った。
「、るせぇ!腹へったわ!
あー、今日何にすっかなー」
「今日は私が作りたい。」
「え?……心優が?」
「うん。たまにはいいでしょう?」
「いいけど…
……作れんの?」
「作れるよ!
……少しだけだけど」
あ、声張り上げた。
へー、そんな言い方もするんだな。
初めて見た一面だわ。
「…じゃあ期待してるわ。」
「そこまで期待されるのも困るけど。」