街が赤く染まる頃。ー雨 後 晴ー



…に、しても


「…まだ?飯。」


作り始めて45分。
そろそろなにかできても良さそうなんだけど。


「ちょ、待って…」


「なに作ってるわけ?」


とりあえずお茶でもいれるか、とキッチンに向かえば、米をなんか炒めてる。


「…チャーハン?にしては…」


「す、座ってて!」


チャーハンにしては米が赤い。
そしてフライパンの横には卵が溶かれていて…


「…あー、オムライスな。
初心者にはハードル高くねー?」


「いいでしょ!座っててよ!」


「いや、見てるね。」


こんな面白いもの、なかなか見ることできねーし。
こいつがどんな風にご飯をくるむのか、そもそもちゃんとくるめるのか?
ぶっちゃけ、卵と別で焼いて、あとで卵を上に乗せるだけでもオムライスにはなるけどな。
くるみたい派なのな、こいつは。


「ほら、そんだけ米炒めりゃ十分だろ。
早く卵いれろよ~。」


「わかってるよ!」


お、卵持った。
さー、どうなる?うまくいくのか?
……いや、到底うまくいくようには見えない。
だけどこいつはなんでもうまくいくやつだしな。
失敗してるとこなんて見たことねーし、もしかしてうまくいくのか?
そしたら全然面白くねーけど。


どうか、下手であってくれ!

……なんて、彼女相手に失礼な願いかもしれないけど
でも、俺の願いは無駄になることはなくて


「はは、下手くそ」


ちゃんと下手だった。


「うるさいよ!」


おー、顔赤くして怒ってる。
……本当、こういうところは俺にしか見せないよな。


「仕方ねぇなー。」


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