街が赤く染まる頃。ー雨 後 晴ー
きっとこのままだと、オムライスとは似ても似つかないことになるから
俺は心優の後ろに回った。
「ちょ「こうやんの。」
後ろから、フライパンを持つ心優の右手の上から俺もフライパンを持ち、
左手も心優の手の上からフライ返しを握った。
思いっきり、心優を包み込むように。
だから心優の顔は見えない。
だけど、こいつの耳は赤く染まってる気がして、そういううぶなところも可愛くて仕方ない。
「ん、できた。わかった?」
「わ、わかったから座ってて!」
すげー綺麗に、とはいかなかったけど
それでもなんとか形になったオムライスを皿に移し、先にケチャップとオムライスを持ってテーブルへ戻った。
ガキな俺はどうしてもオムライスで遊びたくて、ケチャップで『みゆ』と書いてみた。
女みたいだけど、なんとなく書きたくなったんだよな。
ついでに皿に日付も書いて、写メを撮っておいた。
これも記念っつーことで。
「大翔」
「ん?」
「できた、けど…」
お?早いな。
「じゃあ俺そっち食うわ。」
「え!なんで
別にそっち食べればいいじゃん。」
「や、こっちはもう心優の名前かいといたから。
だから俺がそっち。」
「……やだ。」
「はぁ?」
「逆になんでこっちがいいの?
どっちでもいいじゃん。」
「だってこっちは俺が手伝ったから。
心優が全部自分で作ったのはそっちじゃん。
だから、俺がそっちがいい。」
俺がめちゃくちゃ素直にそういうと、心優は諦めたように皿を俺に差し出した。
「……見た目、悪いからね。」
「大丈夫。俺、見た目判断しないから。
人も、料理も。」
そういって受け取るけど、確かにめちゃくちゃ下手で思わず笑ってしまった。
「笑ったじゃん!!」
「はは、悪い。
でも心優が料理するようになっただけでも進歩だもんな。
早く座れよ。食お。」
「……うん。」
「いただきまーす。」
とりあえず似ても似つかないオムライスを一口食べてみたけど、特別美味しいわけでもないのに
見た目も悪いけど、俺の心はすげー満たされていた。
見た目とか味じゃなくて
下手くそなくせに、頑張っちゃうこの彼女の気持ちがちゃんと入ってて
すげー満たされた。
「なぁ、また作ってよ。」
「……また今度ね。」
誰かの飯を食うこと自体、もうずっとなかったから。