街が赤く染まる頃。ー雨 後 晴ー
「美奈子は中学の時に聖凛に来たの。
中1の頃同じクラスで、私と愛梨と美奈子の3人でいつも一緒にいた。」
「…そう、なんだ」
「美奈子と愛梨は同じ塾で、たぶん美奈子繋がりで愛梨は彼氏ができたんだと思う。
でも私とあんなことになって、愛梨は自殺した。
……それだけじゃなくてね、元カレはそれが学校にバレて退学になったんだって。」
「え、退学?」
あの人…
じゃあ、いつもあそこでバイトを……
「美奈子の親もそのことを知ってる。
だから、美奈子は私と愛梨の元カレに会うことすら禁止されてるんだって。
美奈子にとって私は、友達も幼馴染みも奪った嫌なやつなの。
それだけじゃない。
聖凛って、世間が思うほど"清く正しく"なんかじゃない。
噂は大好きだし、女子校だから男子が想像もつかないくらい、悪口や不純な話もしてるの。
だから…私のせいで、美奈子も同類扱いされてるみたい。
私が友達の彼氏を奪って妊娠までした。
美奈子は今、聖凛でそういういじめを受けている。
……なのに、私はそんな美奈子を置き去りにして転校した。
だから美奈子は私を恨んでる。
元カレは退学なのに私は転校するだけで済んで、なにもしていないのに残された美奈子はいじめを受けている。
元はと言えば私が悪いのに、私だけが普通に生きてる。
恨まれて当然なの。」
心優は俺の方を向くことは一切せず、そう語った。
「いじめ、か……」
そんな話にたいして、俺はなにも答えることができなかった。
ただ、どこにでもいじめってあるんだな、なんて他人事かのようなことしか思うことができなかった。
「…みんなが聖凛にどういうイメージを持っているのかは知らない。
だけど、聖凛の子たちはみんな好奇心が旺盛で、噂話が大好きで、いじめなんて当たり前。
その程度なの。」
「心優も?」
「うん。」
「……そっか。」
「…軽蔑、した?」
「はは、まさか。
むしろ、心優にもそういう人間らしいところあるんだなって思った。」
「……人間らしい?」
「そ。人間らしい。
綺麗事ばっか言ってたって、どうしても妬みって生まれるんだよな。」