街が赤く染まる頃。ー雨 後 晴ー
「…大翔にもある?そういうこと。」
「あるある。
俺の元カノなんてさ、本当は智樹の片想いの相手だったんだよ。
隠してたつもりらしいけど、本当は智樹が好きだったやつって知っていながら。」
「え、そうなの?」
「うん。
中学入った頃はさ、智樹の方が背も高くて俺よりも断然モテてたんだよ。」
「え!?」
「いや、そんな驚くなよ。
でさ、それが俺はちょっと悔しくってさー
そんなとき、元カノにコクられて。
なんつーか、何人も智樹のことが好きなのに、智樹が好きなやつは俺のことが好きなんて
ちょっと優越感っつーの?
それに浸りたくて、元カノと付き合ったわけよ。」
「……なにそれ…」
「智樹に自慢できればそれでよかった。
……本気で智樹の友達やってたと思ってたのに、無邪気に裏切ったんだよ、俺は。
ないものねだりばっかしてな。
所詮、人間は自分が一番なんだよ。
だからさ、心優も人間やってんだから、自分一番にしとけよ。」
「……なにそれ。」
あ、笑った。
やっとだな。
「人にどうこう言われるのなんか気にすんな。
自分がいいと思えばそれが一番だろ。
どんな噂されたって、どんだけ嫌み言われたって、自分がちゃんとわかってればそれでいい。
だいたい、恋愛なんてエゴの押し売りだよ。
エゴとエゴで恋愛は成り立ってる。
結局みんな自分が一番。な!」
「な、って…」
「それに、どれだけ周りを気にしても、どれだけ誰かのために頑張ったとしても
明日がどうなるかなんて、誰にもわかんないじゃん。
それなら誰かのためとか、周りを気にしてるより、いつだって自分のために生きてた方が後悔無さそうだし。」
「……大翔らしい。」
「だろ。」
「でも、そういうところ好きかも。」
……へ?
え、好き?え?