街が赤く染まる頃。ー雨 後 晴ー
「まぁいい性格はしてないとは思ってたけど
まさか親友の彼氏とっちゃうなんてね~」
「だよな。
いくら美人でも、友達自殺に追い込むのはちょっとないよな。」
「大翔も変なことに巻き込まれる前に別れた方が良くねー?」
……どいつもこいつも、好き勝手言ってるわけね。
別に派手でもなんでもない普通のやつも噂話は好きなのか
クラス中がそんな話に夢中だった。
「ま、とりあえずさ
大翔も早い段階でわかってよかったじゃん。
一人の女にこだわるなんて、大翔らしくないし?」
と、後藤がまた俺の腕に腕を絡めてくる。
「……俺らしいって、なんなわけ?」
「え?」
「だから、俺らしいってなんなんだよ。
もしかして、一人の女に絞らずにいろんな女抱いて、いろんな女と揉めてる方が俺らしいってこと?」
「え…や、別にそういうつもりじゃ…」
「だったらちょうどいいじゃん。」
「……え?」
とりあえず俺は後藤の腕から抜け出した。
「だから、いろんな女抱いて、いろんな女と揉めてる俺と
友達の彼氏を奪う心優なんてお似合いだろ?」
俺のその一言に、後藤も群がる他のやつらも笑顔が消えた。
さっきまであんなに楽しいそうだったのにな。
「だいたい、お前らそれ誰から聞いたわけ?
まさか、心優が話すわけないよな。
本人から聞いたわけでもないのに勝手に盛り上がって、その楽しさを俺に教えてくれよ。
なぁ。そんな噂話が楽しい?
しかもそれが俺の彼女。
お前らさ、俺の友達なんじゃねーの?
よくもまぁそんな楽しそうに話せるよな。」
「いや…だから大翔のことを思って…」
「俺のことを思って、なに?
俺のことを思ってみんなで好き勝手言ってたって、そう言いたいわけ?
俺そんなこと頼んだかよ。しかも、クラス全員に。
勝手に俺らしいとか決めつけて、本人から聞いたわけでもないのに好き勝手言って、お前らは俺らの何を知ってんだよ。
なんにも知らねーくせに、俺の彼女傷つけるようなことしてたら俺が許さねーから。」
そうキレた俺に、この教室はシーンとした。
普段からこのクラスを仕切ってる俺が、このクラスを盛り上げてる俺が、人気者の俺が、
こんなにキレてるんだから当然だけど。
「おっはよー仁科ちゃん!」
……え?
この声…智樹か…?