街が赤く染まる頃。ー雨 後 晴ー
「こんなとこでなにしてんの?
入んないの?」
智樹の声は開いてる教室のドアの外から聞こえてきて、俺はドアの方へと向かった。
「…おはよ、心優。
なにしてんの?入んなよ。」
「あー、うん」
「え、なにこの空気。
なんでこんな静かなの?」
たぶん、たった今きた智樹と
たぶん、ずっと話を聞いていただろう心優。
智樹は完全に空気読めない感じだし、
心優は心優でかなり気まずそう。
当たり前だけど。
でも、この空気の読めない智樹のおかげで
「ねー、仁科ちゃん!
今日俺数学当たるんだよ!教えてくんない!?」
「あー、うん。いいよ。」
心優も、普通に教室に入った。
……って、今日数学?まじかよ…
え、宿題あったっけ?
俺当たる日?……いや、18日だし日にち的には大丈夫そうだけど
…俺も聞いとこ。
「あの」
教室に入ってすぐ、心優はみんなに話しかけた。
話しかけたんだよ。あの心優が。
なんにも話さなかった心優が。
それだけで智樹も勢いよく振り返ったわ。
「…私が友達の彼氏を奪ったのも自殺に追い込んだのも事実ですし、好きに言ってもらって構いません。
私、気にしませんから。」
心優はみんなにそういって席に座った。
「だってさ。よかったな、お前ら。
心優の許しも出たし、これで堂々と噂話ができるな。」
俺がそういっても、誰もなにも発しない。
ま、当たり前だけど。
「それとさ」
と、今度は席に座っていた智樹が立ち上がってみんなに話しかけた。
「俺も大翔も知ってたから。
仁科ちゃんの過去の恋愛事情も、友達が自殺したことも。
それを知っていながら俺は仁科ちゃんの友達やってるし、大翔は仁科ちゃんにコクったんだよ。
後藤も、本当は大翔がめちゃくちゃ一途だって知ってから発言しろよな~」
……こいつ、聞いてたのかよ。
聞いときながら、あの対応な。
さすが、俺の親友やってるだけあるわ。
「おい、智樹。
お前それいったら俺のキャラが丸潰れじゃねーかよ。」
「最初から似合ってねーよ、そのキャラ。」
智樹はそう俺に笑いかけて、席に座って心優とノートを開いていた。
「ちょ、俺にも写させてー!」
「ダメ。教えてあげるから自分で考えなさい。」
「ったく、しかたねーなー」
ま、とりあえず心優が笑ってるし、いっか。
俺のキャラが丸潰れでも、心優の彼氏やってられるなら。それで。