5年3組パラダイス
シーン・・・。

なにも起こらない。

もう一度、投げてみようかな・・・。

と、もう一つ石を投げようと思ったその時!
大きな魚が、水面から思い切り飛び跳ねた。

「さ、魚?!」

魚は何度も飛び跳ねて、そして、桟橋の上に上がってきた。

「はぁー?」って、初めは驚いたけど、僕はとっさに思った。かつお君の友達に違いない!って。そして、僕はその大きな魚に走り寄った。

その魚を目の前で見て、おすし屋で見たことがあるマグロの解体ショーを思い出した。

「ま、マグロだぁ! どうして、こんなところに?」

おすし屋で見たものに比べて、まだ全然小さかったけど、このマグロは多分まだ子供なんだ。と思った。

マグロ漁船の猟師さんは一度船に乗ったら3ヶ月も帰って来れない程、マグロは遠い遠い海の魚。深い深い海を泳ぐ魚で海の表面に顔を出すはずないのに。なんでこんな海水浴場に?かつお君はそんな遠い海の魚といつの間にどうやって友達になったんだろう?

かつお君って本当に本気でスゴイ!って思った。

でも、かつお君と違って、僕は植物とも動物とも、ましてや住む世界の違う海の魚とだなんて話す事も出来ないし、僕にこのマグロをどうしろって言うの?

間違えました。この場合、かつお君の友達だろうから、呼び捨てしてはいけないね。マグロ君と呼ばないといけないんだね。でも、とりあえず挨拶くらいはしなければ・・・。

呼吸を整え・・・

「あ、あのー、は、はじめましてマグロ君。ぼ、僕は5年3組の沢田将太といいます。」

と、僕がマグロ君に向かって話しかけると、マグロ君は急に桟橋の上でピチピチ・バタバタと尾ひれを動かした。
< 10 / 122 >

この作品をシェア

pagetop