5年3組パラダイス
『り、理絵ちゃん・・・!』

「でも、魚だから言えたんだよねー。お家でぬいぐるみ相手に独り言で恋バナしてるのと同じ感覚っ!
でも、姿はマグロでも、声はまさお君だしさ、私、目ぇつぶってるから、なんか言って?私の事・・・、なんか覚えてる思い出とか、ある?」

『あの、理絵ちゃん・・・ギュっってしたら、その、ム、ムネが・・・理絵ちゃんの。』

理絵ちゃんは、いつも自分のお家で、自分の部屋で、今みたいにぬいぐるみに向かって、独り言で語りかけていたのかな・・・?って、そんな情景が想像できた。

ぎゅぅっと抱きしめられてるかつお君。オッパイ好きなかつお君には喜ばしいことかも。って思って、不謹慎にも笑ってしまった僕でした。

「もうー、なんで死んじゃったの?まさおくぅん。」
『あの、あの、理絵ちゃん。だから、ム、ムネ。ボク、また死にそう・・・。』
「なんでマグロになっちゃったのぉ?」
『なんでといわれても・・・。』
「でもでも・・・、有難う。本当に死んじゃったままだったら伝えられなかったけど、今、こうして伝えられるチャンスがあって、私本当に神様に感謝。だって、今迄まさお君にお礼言いそびれてたから。まさお君、あの時、勉強教えてくれて有難う。」
『そんなお礼言われるほどのことじゃ・・・。』
「それから、授業中居眠りしてて先生にあてられた時、こっそり答えを教えてくれて有難う。それから、教科書忘れて先生に怒られそうになった時、かばってくれて有難う。それから、その時、教科書一緒に見せてくれて有難う。それから、えぇと・・・、私が消しゴム忘れた時、何も言わずに自分の消しゴム半分ちぎってくれたの、有難う。えーと、それから・・・そうだ!体育の授業で転んじゃった時、保健室行ったら、保険の百合子センセいなくて、まさお君、保健室で寝てたのに起き上がって手当てしてくれた時の事も覚えてるよ。あの時も有難う。」
『あはは、いっつも保健室行ってばかりだったから、何所に何があるかとか、覚えちゃってて、自慢にもならないよ。後で勝手に薬箱いじっちゃって、鉢植えのアロエも勝手に手折っちゃってセンセイに怒られちゃったけど。』
「でも、あの時の傷、すごく早く治ったよ。」

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