5年3組パラダイス
百合の花が開く時、その厚みのある花びらのせいなのか、ものすごい音がするということを僕は初めて知った。

花が開く一瞬前、花はフルッと震えて、そしてバリバリッと音がして、そしてまた続けてメキメキッ、ミシミシッと音を立てながらゆっくりと開いて、ある程度のところまで開いたらあとは一気に開いて、大輪の花が朝の光の中に咲き誇った。

花って本当に生きているんだ!と実感した瞬間だった。

『ね、いい天気で、夕べの雨が嘘みたいでしょ。』と、かつお君がにこやかに話しかけ、少し時間をおいてまた喋りだす。
『そうだね。・・・うん。』
また、少し時間をおいて、また喋りだす。
『・・・いつもより少し早く起しちゃったね。ごめんね。』

そう言って、微笑みながら優しくキスをした。


僕と同じ年の小学校2年生の男の子のかつお君が、まるで大人の人が恋人に優しくキスをしたかのように見えて、そして僕は、まるで映画の中のワンシーンを見ていたかのような気持ちになり、それがまだ子供の僕にとっては、見ているだけでちょっと恥ずかしいような気持ちになり、だけど、声をかけて、その幻想のようなひと時を現実に引き戻すことが罪であるかのように思えて、目の前の親友に声をかけることさえできずにいた。

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